前回ご紹介したリリーステクニックを別の観点からご紹介したいと思います。ダンスをしてみたいという方からバレエ、ジャズダンス、ベリーダンスなど何らかのダンスをしたことのある方は、ダンスを上達するのにいろいろな悩みを持っていたかもしれません。そこでお勧めしたいのがリリーステクニックです。
上手く踊れるようになるリリーステクニックとは?
リリーステクニック:呼吸や、骨格、筋肉、関節をゆるめて、ニュートラルな身体で、重力を感じ,体を効率的に動かすテクニックです。動き方を再教育するともいえます。リリーステクニックはコンテンポラリーダンスのテクニックの一つでもあり、身体を治癒するテクニックであるフェルデンクライス、アレキサンダーテクニック、ヨガ、武術の要素を含んでいます。
ダンスを志す人すべてに必要ともいえるリリーステクニックの特徴
リリーステクニックは、ターンやジャンプなどのステップを練習するテクニックではなく、重力に対して自分の動きや感覚を磨くテクニックとも言いえます。床での動きの中で、呼吸を十分に伴い、自分にとって楽で、一番効率のいい動かし方、意識の仕方を体得していきます。よく整体にいって施術を受けたら、体が動かしやすくなった、ジャンプが飛べるようになった、体が楽になった、柔らかくなったという経験は有りませんか?この時の整った体の感覚を自分で体得するテクニックと言ってもいいでしょう。ここでただリラックスして脱力するという事ではないことので注意です。
リリーステクニックをすることで、ダンス初心者は、動きを体得しやすくなり、ステップの習得やリズムをとるのがやりやすくなります。また上級者の方は、多くのステップや振付の練習で固まってしまった体を取り戻し、自分の体をコントロールし、表現豊かに、即興や色々な振付にも対応できるようになるのです。最近ではダンス学校、ダンスカンパニーやバレエ団でもこのテクニックを取り入れているところもあり、ダンサーにとっては、必須のテクニックともいえます。
ダンス初心者と初級者がリリーステクニックをすると良い理由
私が、ラバンセンターというダンス学校のオーディションに受かったときに、まず学んだのはこのリリーステクニックでした。日本ではバレエをしていて、少しモダンダンスクラスにも顔を出したりしていたのですが、もう少し本格的にダンスをしたかった私は、兄の駐在しているロンドンに遊びに行き、ダンス学校やダンス科のあるコミュニティーカレッジを見に行ったり資料を取り寄せたりしてしました。その中でも、私の興味を引いたのはラバンセンターでした。そこでさっそく願書を出してオーディションを受けたのでした。その結果、プロフェッショナルディプロマコースという一年コースに受かったのです。バレエも熱心に練習していたので、とても期待して、きっといいクラスに入れるに違いないと期待していったところ、わたしは、テクニックの一番下のクラスに配分されました。日本では公演にも出ていたのに、”なんで一番下のクラス?”ととてもショックでした。そして、そのテクニッククラスで初めて受けたのがリリーステクニックでした。最初は英語もままならなかったので、訳が分からず、ついていくので必死でした。3ヶ月が過ぎ、コース主任との面接で、私はその主任に「今のテクニッククラスで私は一番下のクラスにいますが、このままやっていてプロとして踊っていけるのでしょうか?」とくだらない質問をしたのを覚えています。その先生は「受けていてどうですか?」と聞き返したので「今のテクニッククラス(リリーステクニック)は好きですが、上のクラスのようにもっといろいろなテクニックを学ばないといけないと思うのですが…」といったところ、先生は「今のクラスはあなたに必要なクラスなのです。一番下のクラスにいてプロのダンサーになった人は少なくないんですよ。」と言いました。私は何となく、ほっとしたような気持になりましたが、今考えると恥ずかしい話です。今では、その時にリリーステクニックを受けて本当に良かったと思っています。というのも、このクラスを受けたことで、私の踊り方が変わってきて、肩の力が抜けて、ターンやジャンプも楽にできるようになったのです。それまでは踊るときに動き方の事ばかり(「右手がこうで、次に左がこう」のような)しか考えていなかったのが、体や動きのイメージを膨らませて踊れるようになり、即興で動きを発展させ、色々な振付も踊って自分でも作品を作れるようになったのです。ダンスを始める前からこういうダンステクニックのある教育を受けていれば上達が早いのは言うまでもありません。海外ではダンス学校や大学のダンス科卒業の人がダンサーとして活躍する人が多いですが、このことも納得がいきます。
プロフェッショナルダンサーがリリーステクニックの効果を証言
ニューヨークを拠点にリリーステクニックを世界中のダンススクールやスタジオで教えているダニエル レピコフというダンスアーチストがいます。彼は、今は世界中でリリーステクニックやダンス即興を教えていますが、彼自身ダンサーでもあります。ダンスに関する文献もたくさん書いていますがその中でも、彼のダンスがどのようにして変わったのかを、彼のエッセイの中でこのように言っています。「最初は、身体の感覚を高め、健康的な体のためのテクニックとしてリリーステクニックをやっていましたが、続けていくうちに、自分自身が先生となり、自分の体に教え、さらに動くことでイメージを膨らませて、ダンスにしていくのが面白くなっています。」彼はダンサーの動きの幅を広げ、イメージも発展させることで即興と、コンタクトインプロバイゼーションを指導と振付もしています。
また、国内外で活躍し、海外のバレエ団でも踊っていた経験を持つキミホ、ハルバートさんはインタビュウの中で、コンテンポラリーダンスをしてから「余分な力を抜いたり、空間や隣の人を感じたりできるようになりました。」と言っていてさらに「生徒には『バレエが上手になりたければコンテンポラリーのクラスに通いなさい』と言っています。」とダンステクニックの効果を話しています。(ここではっきりとリリーステクニックとは言っていませんが、余分な力を抜いてということはリリーステクニックの大きな特徴でもあります。)
まとめ
このように、コンテンポラリーダンスのリリーステクニックは、初心者からプロまで有効なテクニックだということが言えます。コンテンポラリーダンスをしている方に限らず、他の種類のダンスをしている方も試してみてはいかがでしょうか?
参考サイト: コンテンポラリーダンスについて網羅しているサイトのリリーステクニックについてに記事
http://www.contemporary-dance.org/release-technique.html
リリーステクニックを指導するダニエル レプコフのリリーステクニックについてのエッセイ👇
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