先週の金曜日コンテンポラリーダンスカンパニーNoismの公演を彩の国埼玉芸術劇場に見に行った。幕張メッセの展示会での話が長引いてしまい、19時開演に間に合わず、1部を見れなかったのが残念だった。
2部は振付家金森氏の新作「愛の死」。
振付、演出はNoism率いる金森穣、衣装はISSEY MIYAKEのデザイナー宮前義之、出演は井関佐和子、吉崎裕哉。音楽R.ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と愛の死。
悲恋の物語をダンスに
この作品は、「トリスタンとイゾルデ」という悲恋の物語をベースにダンス作品にしたもの。前半部は、女性ダンサー(歓喜の女)と男性ダンサー(末期の男)のデュエット。歓喜の女が末期の男に飛び込んで行く動きのあるリフトが何度か見られたが、女性の強い愛の感情と、それに応えようとする男性の姿を思わせた。
そのデュエットの最後に末期の男が死に、舞台の後ろの幕下に転がって行った後、歓喜の女のソロ(後半)が始まる。歓喜の女は、恋人の死で動揺する感情で埋め尽くすように、広い舞台を踊り回る。動きはバレエのように、華麗で、しなやか。歓喜の女の複雑な感情を全身で踊りに表現しようとするダンサーの動きは、曲に乗せて淡々と語っているようにも見える。
この作品を見ていてベジャールやキリアンの作品を思わせるのは、ダンサー、振付家とも彼らの影響を受けていることからだろう。
まばゆいばかりの金色の幕と白いモダンな衣装は現代アートを思わせる
舞台の奥の天井から下がっている金の幕は、まばゆいばかりで、時々波打ったり、ダンサーの大きな影を映した。それだけで見るとまるで現代アートを見ているようだった。歓喜の女の衣装も、白一色の短めの上着とスカートで、彼女の短い金髪と合わせて、現代的なISSEY MIYAKEのファッションが見られた。
この金の幕は、このダンスの中では男女の純粋な愛を示しているように思える。最後にその幕が落ちたときにその幕下に入る歓喜の女は、彼女の愛を完結したのだろう。
まとめ
舞台装置も大きな幕だけで、ダンサーも男女二人というシンプルな作品だったが、しっとりとまとまっていて、私としては、好きな作品だ。井関佐和子さんのダンスは、作品に忠実でダンサーの質の高さを思わせる。ダンスでストーリーを綴るのは難しいが、その裏にある感情と感性はダンスで表現できる部分だ。そんなことを思わせる作品だった。
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