お腹の深層筋を鍛え腰痛を改善する:ピラティスのロールアップ 科学的根拠から
近年、ピラティスが体幹強化や姿勢改善に効果的であることが広く知られるようになりました。
しかし、具体的にピラティスのどのエクササイズが腹部のどの筋肉に影響を与えるのかを科学的に検証した研究は限られています。
そこで今回は、ピラティスエクササイズが腹部筋厚に与える影響という研究をもとに、ピラティスの腹筋への影響について詳しく解説していきます。
目次
1,ピラティス腹筋エクササイズを細かく検証
この研究では、ピラティスの8種類のエクササイズ(ショルダーブリッジ、ハンドレッド、ワンレッグストレッチ、ダブルレッグストレッチ、ロールアップ、クリスクロス、シザース、ワンレッグサークル)において、
それぞれが、腹部の主要な筋肉群(腹横筋、内腹斜筋、外腹斜筋)をどれくらい使っているのか、その強度を筋肉の厚さを測ることで測定しました。
従来の研究では、筋電図を用いて筋肉の活動を測定することが多かったのですが、本研究ではより直接的に筋厚の変化を捉えられる超音波を使用し、リアルタイムで測定しているためより正確なデータを取ることができました。
2,実験方法
- 対象者: 健康な成人男女21名
- 測定方法: 上記21人の被験者に8種類のピラティエクササイズ(ショルダーブリッジ、ハンドレッド、ワンレッグストレッチ、ダブルレッグストレッチ、ロールアップ、クリスクロス、シザース、ワンレッグサークル)をやってもらい、運動前後および運動中の筋厚を超音波で測定
- 対象とした筋肉:
- 腹横筋 : 体幹の安定性を保つための深層の筋肉
- 内腹斜筋 : 体幹の回旋や側屈をサポートする筋肉
- 外腹斜筋 : 体幹の回旋や屈曲に関与する表層の筋肉
3,腹筋の深層筋(腹横筋と内腹斜筋)を鍛えるロールアップ
研究の結果、各エクササイズがそれぞれ異なる腹筋群を強化することがわかりました。
エクササイズ | 効果が顕著だった筋肉 |
---|---|
ショルダーブリッジ | 腹横筋、外腹斜筋 |
ハンドレッド | 腹横筋、 |
ワンレッグストレッチ | 腹横筋、外腹斜筋 |
ダブルレッグストレッチ | 腹横筋、 |
ロールアップ | 腹横筋、内腹斜筋 |
クリスクロス | 腹横筋、外腹斜筋 |
シザーズ | 腹横筋、外腹斜筋 |
ワンレッグサークル | 腹横筋、外腹斜筋 |
特に「ロールアップ」は内腹斜筋の筋厚を大きく増加させることが確認されました。
これは、ロールアップが体幹の深層筋を集中的に鍛えるエクササイズであることを示しています。
4,ロールアップが腰痛改善に効果的な理由
ロールアップは、仰向けの状態から背骨を一つずつ丸めながら起き上がる動作を行うエクササイズです。
このエクササイズはは、腹横筋や内腹斜筋の深層筋を活性化し、体幹を安定させる効果があります。
腰痛の多くは、腹横筋や内腹斜筋などの深層筋が弱くなることで、腰や脊柱を支える力が低下することが原因とされています。
ロールアップで腹筋を鍛えることで、体幹が安定し、腰椎への負担を軽減、腰痛の予防・改善につながると言えます。
別の興味深い研究では、この研究の中でも行われたハンドレッドだけを8週間連続して行っとところ、腹横筋は強化されたけれども、内腹斜筋は減少したという研究もあります。
5,ロールアップのやり方動画
下の動画で、ロールアップについて細かく説明しています。
6,まとめ
今回ご紹介した研究を通じて、ピラティスの8種類のエクササイズが腹部の異なる筋群に対して異なる影響を与えることが明らかになりました。
特に「ロールアップ」は、体幹の深層筋を強化することが検証され、このことより、ロールアップは腰痛の改善や予防に有効なエクササイズであるということができます。
普通のロールアップはピラティスの中でも初心者には難しいエクササイズですが、体を起こすのが難しい場合は、初級のロールアップエクササイズから取り組んだり、座った状態からロールダウンだけやるようにすると、腰痛も改善しながら徐々にレベルアップすることができます。
腰痛持ちの方、ロールアップ、取り組んでみてはいかがでしょうか?
参考文献
ピラティスのロールアップが腹筋の厚さに及ぼす影響
Kim, Y.W., Sim, S.H., & Lee, D.Y. (2016). “The Effect of Various Pilates Activities on Abdominal Muscles Thickness,” Indian Journal of Science and Technology.
Critchley DJ, Pierson Z, Battersby G. Effect of pilates mat exercises and conventional exercise programmes on trans-
versus abdominis and obliquus internus abdominis activity,Pilot randomised trial. Man Therapy. 2011; 16(2):183–9.