長時間ストレッチはNG?バレエ団の実践例とピラティス効用
バレエや社交ダンス、モダンダンスなどダンスに取り組む方にとって、体を柔らかくする柔軟体操は欠かせないと思いがちです。
しかしながら、最近では、長時間同じ姿勢で行う静的ストレッチが、逆に怪我のリスクを高める事実がわかってきました。
そして、オーストラリア・バレエ団でダンサーのコンディショニングをしている理学療法士スー・マイヤーズ氏と、トレーナーのアンドリュー・プルチャー氏はバレエ団員のトレーニングからその事実を検証しました。
目次
【事例】バレエ団がストレッチ器具を廃止した理由
オーストラリアバレエ団の理学療法士スー・マイヤーズ氏によると
「以前は、スタジオの片隅にストレッチ器具を設置していたので、ダンサーたちはそこに立って何分も伸ばしていました。
ところがその長時間のストレッチが原因で、ふくらはぎの筋力が低下し、怪我が増えていたことがわかったのです。
そこで、そのふくらはぎストレッチ器具を撤去。代わりに筋トレ器具(カーフレイズなど)を導入したところ、その器具でトレーニングするようになったダンサーたちのふくらはぎの怪我が劇的に減ったのです。」
つまり、「ストレッチ器具に乗っているだけのストレッチだけでは、筋力が落ち、怪我をしやすくなる」ということがわかったのです。
長時間にわたる静的ストレッチの落とし穴
長時間、筋肉を引き伸ばす静的ストレッチには、一時的に関節可動域が広がるメリットがありますが、
同時に筋出力(力を出す力)が低下させてしまうため、関節の安定性が失われ怪我をしやすくなるというデメリットがあります。。
特にバレエ、社交ダンス、モダンダンスなどの、体をしなやかに動かすダンスでは、関節と筋肉を柔らかく動かす柔軟性と共にホールド、キープする“強さ”の両立が必要です。
バレエ団が実践するふくらはぎの怪我をなくすトレーニング
その事実がわかってから、オーストラリア・バレエ団のマイヤーズ氏は、バレエ団のダンサーたちにそれまで行っていた器具を使った長時間のストレッチをやめさせ、代わりに片足のルルベ(片足で踵を上げるエクササイズ)を、続けて24回やるエクササイズを毎日のバーレッスンの最後に取り入れるように提言しました。
そうしたところ、ダンサーたちの足首やふくらはぎの怪我が激減していったというのです。

「動的ストレッチ」で深層筋を使うピラティスはダンスのトレーニングに適している!
さらにトレーナーのプルチャー氏は、「ダイナミックストレッチ、PNFストレッチ、ダイナミックストレッチなどストレッチのストレッチは、筋肉を40秒以上は伸ばさないので、伸ばしすぎることはないですが、
一番大切なのは、ウォーミングアップの時に感じる奥の方の硬い筋肉を見つけて、そこを十分にほぐすことです。
このように、自分で自分の筋肉に気づいて、トレーニングしていくことの方が、ダンサーにとっては重要なのです」と言っています。
ピラティスは、ただ伸ばすだけのストレッチとは異なり、自分で深層筋を意識しながら、ストレッチしたり、動かしたりするので、ダンサーのためのしなやかな柔軟性と体軸の安定性を養うのに適したトレーニングといえます。
私の ピラティススタジオでも、社交ダンスの愛好家の方やモダンバレエのダンサーの方々が、
「動きが軽くなった」「上体が柔らかく動かせるようになった」「バランスが良くなった」と実感してくださっています。

まとめ
ダンサーは体が柔らかくないと!と言って、床で長時間ストレッチを行ってからクラスを受けるというのはもう昔の習慣と言えるでしょう。
この記事にあるオーストラリアバレエ団の実証でもわかるように、ダンス、バレエのトレーニング方法を見直すことによってより効果的に、怪我のリスクを減らし、踊るための体づくりができるようになります。
バレエ、社交ダンス、モダンダンスなど、踊る体のためのトレーニングに不安を感じている方は、ぜひ一度「動きながら整える」トレーニングであるピラティスを新しい体づくりを体験してみてください。
出典:
Rain Francis (2019). Why The Australian Ballet dancers quit stretching. Dance Australia Magazine.
https://dancemagazine.com.au/2019/09/why-the-australian-ballet-dancers-quit-stretching/