ダンスの怪我を予防するためのウォーミングアップとクールダウンの方法
以前教えていたダンスクラスで、生徒さんから、「先生!先週、奇跡の授業っていうBSでやっている番組で、ミュージカルの先生が高校生にコーラスラインを教える番組、見ましたか?」
と唐突に聞かれました。
私が、「えっつ?見ませんでしたが…」というと
その生徒さんは続けて、「そのダンスクラス、生徒たちに人気があるっていうんだけど、最初のウォーミングアップが長くて、生徒たちがヘトヘトになるらしんです。先生(私のこと)のクラスのウォーミングアップも長いですが、長い方がいいんですね。」と一言。
私のダンスクラスでは、ウォーミングアップは大体、20から30分くらいやっていました。
特に、普段体を動かしていないとか、新しいことや難しいテクニックや振付をする場合は、ウォーミングアップの時間を30分くらい行いました。
急に、走り出したり、ジャンプをしたりすると、腰や膝などに少し痛みを感じたりしたことなどありませんか?
これは、急に、激しく体を動かすことで、身体に負担がかかっているということなのです。
これを繰り返していたら、腰痛や膝を痛めてしまうことは想像できますよね。
また、ダンスの振付を踊った後、クールダウンをしないと、疲れが残ったり、体が歪みやすくなったりします。
このように身体をいつもいい状態にしておくために、ダンスをする前後には、ウォーミングアップとクールダウンは重要です。
そこで、この記事では、ダンスの本番前やダンスクラスの前、または、家で、自主的にダンス練習する時も、自分で(5分から10分くらいでも)やっておきたいウォーミングアップをお伝えします。
目次
なぜ、ウォーミングアップは必要なのか
ウォーミングアップとは、本格的に体を動かす前の軽い運動のことです。これからダンスの練習、ピラティス、など本格的に運動を始める前にウォームアップはとても重要です。
効果的にウォ−ムアップをすることで、筋肉や、関節を滑らかに動かしやすくなります。また、呼吸や、精神も集中しやすくなるので、全身を動かしやすくなり、いいパフォーマンスができるようにまります。
さらには、怪我をしにくくするというメリットもあります。
ウォーミングアップの3つのポイント
ウォーミングアップには次の3つのことを考慮して行うのがポイントです。
1、軽いジョギング、バウンスなどの運動で徐々に体温を上げ、筋肉や関節を動きやすくする。
*急に走ったりしない。いきなりストレッチするのもNG!
2、身体の心肺機能、神経機能の働きを良くするために、呼吸を十分に行う全身運動をします。
*ピラティスで行う立位の全身運動などが参考になります。
3、ダンステクニックや振付の動きのための準備運動を行う。
- 体幹強化(体軸づくり)
- バランストレーニング
例えば、片足を高く上げるという動きを練習するときは、片足バランスの動きをしておくなど - セラバンドを使った関節調整
- ピラティスのようなアラインメント改善エクササイズ
この3つ目の準備運動の部分に、近年注目されている「神経系ウォームアップ」の考え方が含まれます。
それでは、神経系ウォームアップとはどのようなウォームアップかを簡単に説明します。
脳と筋肉の神経伝達を高める神経系ウォームアップ
神経系ウォームアップとは
体温を上げて体を動きやすくし、脳と筋肉の間の神経伝達速度を高める運動をすることで、運動パフォーマンス向上と怪我を予防する準備運動のことです。
神経系ウォームアップ(Neuromuscular Warm-Up) では次のようなことを行います。
①体温を上げて動ける状態にする
②脳と筋肉の神経伝達を高める
③動きの反応速度やコントロールを良くする
体温を上げて動ける体にする点は、一般のウォーミングアップと同じですが、運動神経の感覚を高めたり、バランス感覚やコントロールを高めるための準備運動をする点は神経系ウォーミングアップの特徴です。
実際に、次の研究では、
神経系ウォームアップを取り入れたバレエダンサーは、従来のストレッチ中心のバレエウォーミングアップをしたダンサーよりも怪我が少なかった
と報告されています。
Neuromuscular Warm-Up is Associated with Fewer Overuse Injuries in Ballet Dancers Compared to Traditional Ballet-Specific Warm-Up
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.12678/1089-313X.121522e
つまり、ダンサーに必要な 体軸・体幹・関節の動き・姿勢(アラインメント)を整えるウォームアップこそ、怪我を防ぎパフォーマンスを高める鍵 なのです。
また、ウォームアップの時間の目安は、年齢やその人の体力のレベルにもよりますが、一般的には、少し息が弾む、心臓がドキドキするくらいが適当です。
特に、年齢が高くなれば少し長めにじっくりとやることをお勧めします。
また、体の動きが複雑になるダンスの中、上級者は、初級者や初心者よりさらにウォーミングアップに時間をかける方が、パフォーマンスが上がります。
次の動画も参考にどうぞ
ダンスや運動の後のクールダウンは?
次にダンスの後のクールダウンについてです。
ダンス練習やリハーサルの後に、軽くクールダウンしておくことで、身体への運動の負担を軽くし、疲れを残しにくくすることができます。
自主的にダンスの練習や運動をした後に、軽くクールダウンできるように、ここでは、そのクールダウンのポイントを4つお話ししようと思います。
クールダウンとは?
クールダウンとは激しい運動の後に心身を共に平常な状態にする軽い運動のことです。
クールダウンはなぜ必要か
クールダウンをすることで、徐々に心拍数を下げていくので心臓への負担をなくすことができ、筋肉にも疲労を残さないようにすることができます。
さらに、運動やダンスの動きで偏った体のバランスを整えるという整理運動としてのメリットもあり、ダンスによる怪我のリスクを少なくします。
クールダウンの4つのポイント
クールダウンをするときのポイントは次の4つです。
1、急にではなく徐々に動きを止めていくようにする。
2、使った筋肉(脚、腕、ふきらはぎ、肩など)をストレッチする
3、十分に呼吸を整える
4、軽く各関節を回してあげる。(手首、足首、腰など)
*また、背骨のロールアップロールダウンを行うと、運動で偏った体のバランスを整えられるのでお勧めします。
時間としては、全部で大体5、6分くらいで構いません。
下の動画も参考にどうぞ
まとめ
ダンスのリハーサルや本番の前に、軽くジャンプをしたり、バランスを取ったりするのを見かけますが、このように、それぞれの体調に合わせて、ウォーミングアップするのは効果的です。
クラスでは全員が同じ動きで、ウォーミングアップをしますが、外などの寒い場所に長くいる場合は、他の人より余計にウォーミングアップをして体温を上げる必要がありますし、
また、体が特に硬い人は、クールダウンの時に硬い部分をストレッチをすると、体が温まっているので、筋肉が伸びやすく柔軟性を高めるのにも効果的です。
自分の体の調子を見ながら、上手にウォーミングアップとクールダウンをして、気持ちよく体を動かせるようにしたいですね。
ダンサーにとって本当に必要なウォーミングアップにある
体軸・体幹・関節の動き・姿勢(アラインメント)を整え、神経と筋肉の連携を高めるエクササイズは
当スタジオのレッスンでも、身体のコンディショニングを整えるトレーニングとして行っております。
「体の使い方は本当に大丈夫かな?」と感じた方は、
ぜひ一度、レッスンで体の変化を体感してみてください。
参考文献
Neuromuscular Warm-Up is Associated with Fewer Overuse Injuries in Ballet Dancers Compared to Traditional Ballet-Specific Warm-Up
Complete guide to primary dance Lyne Paine
Choreographing from within Diana F. Green

